【140字小説】ヤクザの親分他/三州生桑
 
た。


【泥棒】
盗みに入った豪邸には寝たきりの老婆がゐた。「あんた泥棒かい?」異臭がする。「婆さんよう、診てくれる人はゐねえのか」「ああ、ゐないよ」弱ったなぁ…。俺は婆さんの体を拭き、布団を取り替へ、おかゆを食べさせ、金を少し盗んだ。「養生しなよ」婆さんは泣いてゐる。弱ったなぁ…。「また来るよ」


【祖母】
をととし亡くなった祖母が居間に座ってゐた。ニコニコ笑ひながら「もうそろそろ行きませうかねぇ」と言って立ち上がりかけたので、私は「もう少しええでせう」と言って祖母を抱きとめた。「それぢゃ、もう少し居ようかねぇ…」私は泣いてゐた。祖母をどれだけ愛してゐたか、私はやうやく気がつ
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