高野山物語/済谷川蛍
 
。オンコロコロと真言を七遍唱え、春に逢おうと囁いた。部屋に戻ると、爺さんが逢えるさと呟いた。僕はその言葉を信じなかった。

 風邪気味のときに悪夢を見た。巨大な物体に追われる夢だ。押しつぶされる恐怖から必死に逃げる。爺さんが見え、僕は助けを求めようと爺さんのほうへ逃げるが、爺さんは消えてしまう。目が覚めて、むりやり爺さんを起こし、どうして助けてくれなかったんだよ!と泣きそうになりながら訴えた。爺さんはわしは知らないと言った。じゃあもし僕が実際に何かに追われてたら、爺さんは僕のことを助けてくれるの!と言うと、爺さんは頷いた。

 犬を探しに土曜に爺さんと出かけることになった。バスに乗ると
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