高野山物語/済谷川蛍
 
して熱を帯び、ビリビリとした空気に変わった。

 あるとき爺さんが呆けた老人のように意味もなく錠剤をアルミ箔から押しだしていた。メイラックスをつまんだかと思うと、力を加えず砂粒のように変え、指をこすった。薬の数が合わなくなると言ったら手品のようにアルミ箔の中に戻した。
 またあるときはタバコの煙が大人しいねずみに変わった。撫でていると、急に感触がなくなり消えてしまった。てのひらを嗅ぐと煙の臭いに混じって微かにねずみっぽい匂いもした。
 一番驚いたのはノートパソコンでニコニコ動画を見ていると突然画面が無辺の桃源郷に変わったときだ。川が流れていた。それがあまりにリアルだったので指先を近づ
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