黒頭巾ちゃんと仮面舞踏会/チアーヌ
 
らわたし、泣いてしまって」
「おやおや。泣かせてしまったとは。それでは、お慰めしなくてはなりませんね」
 指揮者に手を取られ、黒頭巾ちゃんは歩き始めました。
「こんなに人の少ないホールで演奏するなんて、僕は久しぶりですよ。でも、楽しい経験だったな。奥さんのように素敵な女性と知り合いにもなれましたしね」
「みんな、バカなのですわ。こんなに素晴らしい演奏に気がつかずに」
「みんな踊りに夢中ですから、仕方がないですよ。それに、みんな楽しそうに踊っていましたし、それで充分なんです。ワルツと言えど、ダンスミュージックなんですから。踊れないようなものを演奏しちゃまずいですからね。それに、僕も本当に楽
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