黒頭巾ちゃんと仮面舞踏会/チアーヌ
奏はすでに終わっていて、黒頭巾ちゃんは涙を流したままホールの隅に立ち尽くしていました。
「全くこの奥さんは、飲むといやらしくなるだけじゃなくて、泣き上戸にもなるのかい。ほんと困ったもんだ」
道化師が背後でぶつぶつ言っています。
「うるさいわね。黙りなさい」
黒頭巾ちゃんは不機嫌に、道化師に命じました。
「へい。へい.....」
道化師はおどけながら一回りしました。
全く腹の立つやつです。
そのときでした。
「奥様。音楽はお気に召しましたでしょうか?」
指揮者が、目の前に立っていました。
「あ、マエストロ....、え、ええ、もちろん。本当に、素敵でした。だからわ
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