黒頭巾ちゃんと仮面舞踏会/チアーヌ
 
 黒頭巾ちゃんは、そっと横に回り、横顔を垣間見ました。
 ベネチアンタイプのマスケラをつけた、その横顔には、見覚えはありませんでしたが、黒頭巾ちゃんは気がついたのでした。
 演奏は続いています。
 誰もいない大ホールで。
(神様.....)
 黒頭巾ちゃんには、その指揮者が黒い神様だと、はっきりとわかりました。

 そう気がついた途端、黒頭巾ちゃんの周囲は、暗闇に包まれました。
 そうして、黒頭巾ちゃんの目に見えたのは、古い窓枠と、木の床でした。
 使い込まれた木の床は、かつて黒頭巾ちゃんが、熱心に磨いたものなのでした。
 そして、窓の外には、大きく育ったヒマラヤ杉の梢に、白い
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(2)