労働/攝津正
 
ところだったが、小説が超現実だからといって自分の生活まで超現実にならずとも良いのに、と愚痴た。津田沼駅で、切符をなくしたと申し出ると、追加で二百十円支払わせられた。攝津は悔しくて泣きそうになった。そんな瑣末な事で泣きそうになる自分が厭になった。
 職場で使えない奴と看做されているという被害妄想、否現実?が攝津を精神的に追い詰め苦しめる。確かに攝津は、何をやらせてものろい。小分け、ピック、オリコン出し、何をやらせても鈍である。だから管理者が、攝津の事を無能だと思ってもやむを得ぬところだった。攝津が幾ら自分の美点を探し回っても、そんな美点などは労働の場では通用せぬのだ。労働の場では能率と正確さが全て
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