労働/攝津正
全てである。後は余分な物だ。攝津の所謂「教養」など何の役にも立たぬ。むしろ邪魔。
攝津は大学時代、いやもっと前から、「一般教養」を身に付けようとしていたのだった。早稲田大学で文学研究会というサークルに入ったが、何を読みたいかと先輩から問われ、哲学史を学びたいと答えた。攝津はハイデガーなりを特権化するのめり込み方は避けようと考えていた。それ迄好んでいたのはフーコーやドゥルーズ=ガタリなど所謂「ニューアカ」であったが、大学では地道に哲学史をやろうと思っていた。実際、岩波文庫等を読み耽り、一応、西洋哲学の代表的な著作には概ね目を通した。しかし、そんな事が何になったろう。
攝津は文学研究会で、
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