労働/攝津正
 
らぬ。だが、やってみる他無いのだ、と攝津は考えていた。
 ところで、iwaさんが攝津の速筆ぶりに感嘆していたが、攝津が自慢できるのは──それも大した自慢ではないのだが──速読と速筆位のものである。攝津は、ファーストテイクが一番いいというのはモンクの考え、文章におけるモンク流ですね、と返した。小説家でいえばジャック・ケルアックの自然発生的散文である。iwaさんは編集者らしく推敲に推敲を重ねた文章を書くのだが、彼は推敲を重ねる度に劣化するように思えるという。攝津には良い文章だと思えたのだが。iwaさんは攝津より一回り程年上である。攝津の、相対的な若さ、そこからくる無鉄砲となんでもやれ精神みたいなもの
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