労働/攝津正
ねばならぬ場面も多い。力関係上、こちらが真正面から反論できぬ位置にいるからだ。そこで黙ってしまうのは転向か? 敢えて異論を唱えねばならぬのか?
自分独りの時に幾らラディカルになれても、生活の場が抑圧されているのでは駄目だ、と攝津は考えた。職場で家庭で攝津の政治と性は抑圧されていたし、現に抑圧されている。どうすればいい、と攝津は独り呟いた。
攝津の空元気は二日と続かなかった。今日は又、労働が辛く厭わしいものに思え、明日もそれが続くと思うと更に憂鬱になった。攝津は、自分はやはり労働が「好き」ではないのだ、と考えた。労働が好きで働いている人など殆ど居ないという事実はよく承知しているが、それは
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