桃色ラビッシュそして清潔な朝日/ソノタ
いところのない猫で、老成した-実際には2歳くらいだったのだが-おとなしい犬のような空気をまとっていた。当時、まだ歩き始めたばかりの妹の、容赦ないあつかいにも爪ひとつたてることなく耐える猫だった。
わたしは彼をかわいがったりはしなかった。自然に湧きあがる愛とよべるこころをもって接していたが、小さかったわたしは彼と対等の立場にいたのだ。いつもいっしょに遊び、彼の好物ならなんでも知っていた。とくに好きだったのが、おにぎりに貼りついているしなしなの海苔。口に入れるとかならず上あごに海苔がはりつくようで、それを懸命にとろうとする様はとても愛おしかった。気に入りの寝床や、ときどき冒険の旅に出ることも知っ
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