観覧車のこどもたち/済谷川蛍
ロマンチックな陶酔、緩やかな回転運動。彼らの人生の最高の時であった。
バタバタという音とともにヘリコプターが近づいてくる。機影はグングン大きくなって立体的になってくる。こどもたちの世界は戦争の真っ最中へと変わる。みな息をひそめ、身体を密着させる。ヘリコプターは遠くへ飛んでいく。男の子が空に向かってガスガンを撃った。みなが笑う。携帯が鳴った。侵入者の知らせだ。こどもたちは再び身を屈め、黙り込む。犬を連れた大人の男性が通り過ぎる。大人は敵だ! 気付かれないように双眼鏡で見張っていた少年がもう安全だと再び携帯を鳴らすと、こどもたちは安心してイスに座り直す。こどもたちは未熟故に仮想的な事柄を現実的に
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