「えいえん 佳子1997 冬」「鳥の唄 2000 冬」全面改定版/ダーザイン
の冬、佳子は麻痺したようにぼんやりと窓の外を見ていることが多かった。相変わらず神様との電話は続いていたが、もう夕日を恐れることはなくなっていた。
その日、朝早く目覚めた私は久々に佳子を外に連れ出すことに成功した。テレマークスキーを履いた私たちは、近くの河川敷の疎林をゆっくりゆっくり散歩した。遥かな空の青みから幾筋もの光の帯となって射し込んで来る木漏れ日がとても美しかった。佳子は透けるようにやわらかいソプラノで武満徹のペンタゴナルガーデンの一節を口ずさんだ。青みの向こうから大きな雪の結晶が無数に舞い落ちて、私たちの静かな空間を満たし、一瞬、時が止まったように、無音で降りくる雪が大変な密度のままに
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