『批評際参加作品』私が読みたい詩-実存と世界性/ダーザイン
するのを見まもるシルビア。排気ガスで黒く汚れた壁と、炎天下に立ちつくす売り子たちの姿が無声映画
のカットのように映り、アクセルを踏み込むと視界から消える。ドライバーの目線をはばむ鋼鉄の防音壁の外に広がる原生林のむこうには、板きれやダンボールで風をしのぐバラックの群がゆるやかな丘の中腹まで続いている。
あれは小さなころ、縫いぐるみを抱いて祖母の家に遊びにいったときのことだ。眠たい目をこすりながら飛行機がこの街に着陸してゆくとき、砂粒のようなの電灯の群が、この丘のうえまで這い上がっているのを見て、シルビアはベッドカバーに落ちた宝石のように、それらを手にとることができるような気がしていた。いま、
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(4)