【批評祭参加作品】つめたくひかる、2?江國香織『すいかの匂い』/ことこ
 
では、同級生にいじめられた「私」が、何故だか気の合う下宿人の「蕗子さん」とアイスを食べる場面であり、「ジャミパン」では、「私」と「母」は「スリップ一枚で、うちじゅうで一ばん涼しい台所の床にならんで横にな」っているというリラックスした状態である。
 ここから、小説における「ひんやり」の場合は、「つめたい」と共に精神的に不安定な場面でも用いられており、単独では精神的に安定している場面で用いられている、といった具合に、詩のなかにおける使用ほどには明確な違いを断定することは出来ないと言える。

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 話を再び「つめたい」に戻したい。冒頭でも述べた通り、『すいかの匂い』は夏をテーマにした短編
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