【批評祭参加作品】つめたくひかる、2?江國香織『すいかの匂い』/ことこ
。では、小説においてこれらの差異は見られるだろうか。『すいかの匂い』で「ひんやり」が用いられている場面を見てみよう。
○つめたく濡れた甲羅、暗緑色のひんやりした手足、厚ぼったいわりになめらかな皮膚、無表情な瞳。(「蕗子さん」)
○午後、私と蕗子さんは台所で一緒にアイスクリームを食べた。(中略)ひんやりとうす暗く、ぬかみその様な匂いのする台所だった。(「蕗子さん」)
○とてもしずかな場所だった。かなり奥まっていたので空気がひんやりし、秘密の火葬場には、これ以上ないくらいふさわしかった。木々の深い匂いと土のつめたさ、それにめまいのような日ざしの中でするお葬式ごっこは、家の中でするそれ
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