【批評祭参加作品】つめたくひかる、2?江國香織『すいかの匂い』/ことこ
こと腹を切り裂く包丁の感触まで手に残っているような気がする。そして、その感触は、私が生まれてはじめて味わった「とりかえしのつかないこと」の苦さだったと思う」と書かれており、やはり主人公は不安定な心理状態であることが窺われる。他にも挙げていけばキリがないので割愛するが、前後の文脈から推察しても、『すいかの匂い』において「つめたさ」が語られるとき、主人公は不安定な心理状況に置かれていると言える。
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ところで、江國香織の詩において、「つめたい」は精神的な隔たりがあり、「ひいやり(ひんやり)」は精神的に満たされ、安定している、といった具合に、用いられる場面が異なることを前回指摘した。で
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