【批評祭参加作品】ひろげた本のかたち(佐藤みさ子)/古月
 
 
 前置きが長くなってしまった。恐れずに感じたままを書くことが誠意であると信じつつ、本題に入りたいと思う。
 まずは、佐藤みさ子の句をいくつか紹介してみたい。


 ・春の沼家をさかさに突き落とす
 ・玄関に寝床になだれ込む道路
 ・吊りかごの穴から春の足を出す
 ・カサコソと言うなまっすぐ夜になれ
 ・赤ん坊と視線が合わぬように産む
 
 ・家一つ二つはぎとる目の仕事
 ・みんな帰ったあとの夜空に浮く帽子
 ・点線で表わす塔の地下部分
 ・花びらの汁のしたたり肉屋まで
 ・年齢を問うので足の骨を出す
 
 ・新しい箱を汚していく月日
 ・二人で食う意味を一人
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