【批評祭参加作品】ひろげた本のかたち(佐藤みさ子)/古月
 
は語りすぎている。断片的なイメージで鋭く読み手の心にすっと入り込み、言葉を最低限にとどめることで発想の自由度を確保する現代川柳は、わたしにとって居心地が良い。
 
 話を佐藤みさ子に戻す。
 最初に言っておくと、わたしは彼女のことを、何一つとして知らない。
 わたしは彼女とは面識も交流もないし、彼女の人物像や私生活についても、インターネットからは何ひとつ伺えない。わかるのは公開されている略歴くらいのものである。
 本稿の執筆動機は、ただわたしが彼女の句を心底から好きだという、たったそれだけだ。そして、本稿はそうした限りなく予備知識ゼロの状態で書かれていることを、読者にはくれぐれもご留意い
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