【批評祭参加作品】ひろげた本のかたち(佐藤みさ子)/古月
 

 そして、自覚した上でその孤独を受け容れているのだ。


 ・さびしくはないか味方に囲まれて
 ・たすけてくださいと自分を呼びにゆく
 ・たすけてとだれもいわないたすけない
 ・倒れないように左右の耳を持つ

 
 もしかすると、佐藤みさ子は境界線のない人間なのではなく、境界線上の人間なのかもしれない。
 彼女は、生と死のはざまで、生きながらにして死んでいる。あるいは、永遠のように長い死を、ゆるやかに死んでいる最中なのであろう。
 藤篭の中で鳴く生きものと死にもの、これを並べて描写できることが、佐藤みさ子の特異性に他ならない。

 
 ・言葉だけ先に行かせて後から逝
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