【批評祭参加作品】ひろげた本のかたち(佐藤みさ子)/古月
あるいはオブセッションを有しており、そうした心の引き出しの暗い片隅から言葉を抽出している。それはたいていの場合は限りある資源であり、書き続けていると枯渇しかねないものだ。
だが、この資源は有限であるという逃れられない詩人の宿命においてこそ、佐藤みさ子の強みがある。
彼女の希薄であいまいな存在は、そのあいまいさゆえに、彼女の目に私たちとは異なる日常を見せる。われわれが暗い片隅からこっそりと取り出してくるものが、彼女にとっては平然と、日常の中に存在しているのだ。そして、日常は枯渇しない。
・正確に立つと私は曲がっている
彼女は、自分の立ち位置の特殊さを自覚している。
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