【批評祭参加作品】ひろげた本のかたち(佐藤みさ子)/古月
が存在しない世界は寂しくはないが、それはまた同時に、永遠の孤独をも意味する。本来は外側から恩寵のように与えられる救いは、外側が存在しない以上、絶対にありえない。あいまいになった世界で彼女がすがる藁ほどの確かさ、それこそが己の内にある言葉であったのだろう。自己について書き続けることでのみ、彼女は自分の「空白」のページを埋め、生きた証を「確か」に残せるのだ。だからこそ、彼女はひたすらに言葉を書き続ける。
・言葉だけ立ちふさがってくれたのは
・あちこちを傷つけ滲みてくる言葉
・書きながら老いながら死にながら
やや乱暴に言えば、詩人はみな大なり小なり固有のトラウマ、ある
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