【批評祭参加作品】ひろげた本のかたち(佐藤みさ子)/古月
 
い。すでに死んでいるわたしが祭壇を見ていて「祭壇の写真がわたしと違う」と言っているのか、それとも、他人の葬式に参列した自分が祭壇の写真を見て「あそこにあるのは本当はわたしの写真であるはず」と思っているのか、細かい部分まで突き詰めると、実に多種多様な解釈が考えられる。
 布をかけるという情景も、日本人の心に深く染み付いた、ぬぐえない不安要素のひとつだろう。
 白いシーツを被った子供がおばけごっこをしたりするのは端的だが、もっと日常的な場面で、たとえば食卓の上でふきんを掛けられた皿などにも、正体の分からない不思議な不安感を感じたりはしないだろうか。


 ・食卓に向かうマスクをした男
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