【批評祭参加作品】つめたくひかる、1?江國香織『すみれの花の砂糖づけ』/ことこ
る。
*
この「つめたさ」の距離感は、似たような言葉である「ひいやり(ひんやり)」を参照すると、より鮮明になる。
「午後」
(前略)
うえをむいて目をつぶったら
まぶたに日があたって きもちよかったので
私は
まぶたに日があたってきもちいい
と、言った。
すると、とじたまぶたに
やわらかな唇がおちてきた
やわらかな、ひんやりとした。
それで私は
唇のほうがもっときもちいい
と、言った。
(後略)
ここで「ひんやり」は物理的なつめたさを指しているが、「わたし」と「あなた」はまさに熱烈な仲であり、精神的な隔たりはまったく見
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