【批評祭参加作品】つめたくひかる、1?江國香織『すみれの花の砂糖づけ』/ことこ
 
く見られない。


「私はとても身軽です」

浴衣をきるのはひさしぶり
あとは余生

おもうので
私はとても 身軽です
(中略)
夏の夜は闇が濃く
風が甘く
ひいやりとして
いい匂い
そばにいる

いってくれてありがとう
でも あなたはここにいないので
私はとても 身軽です


 ここでは、「あなたはここにいない」わけだが、「私」は「とても身軽です」と語っているように、精神的な欠落は見られず、完全にふっきれていて、安定している。つまりいずれにしても、「ひいやり(ひんやり)」は満たされた感情の場面で用いられており、「つめたい」との違いは歴然と言える。ここからも、「つめたい」が用いられた場合の精神的な距離、隔たりが浮かび上がってくるのではないだろうか。


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