【批評祭参加作品】つめたくひかる、1?江國香織『すみれの花の砂糖づけ』/ことこ
でもう一篇、「つめたい」という語が出てくる詩を読みたい。
「なにもない場所に」
なにもない場所に
言葉がうまれる瞬間を
二人でもくげきしたね
あれは
夜あけのバスにのって遠い町にいくときの
つめたくうす青い空気くらいまぎれもない
たんじゅんにただしい
できごとだったね
この詩の場合、少し難しい。その短さゆえに、如何ようにも読めてしまうからだ。ただ、「もくげきしたね」と、「できごとだったね」という語り口から、もう終わったことだという意識、これまでの「つめたい」という語から、やはり「二人」の精神的な距離の隔たりを書いているのではないか、と考えられる。
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