【批評祭参加作品】迷子論序説/岡部淳太郎
なに注意して、地図と目の前の風景を比較して見ても、迷う時は迷うものだ。目的地へと安全に導いてくれるはずの道は、一瞬にして迷路へと変る。その迷路の中心に、人を喰らう魔物のような存在が舌なめずりして待っている。そんなふうに思えてしまうことがある。そんな時に人が不安を感じるのは、おそらく主体が丸ごと混沌の中に落ちこんでいるというより、周縁の、境界線上の感覚であるのだろう。周縁とは秩序の周縁、秩序が外側に行くに従って次第に薄くなり、密度が薄くなっているような場所であり、境界線上とは秩序と混沌がわずかに袂を接し、その両者の性質が互いに滲み合っているような場所のことだ。だから、秩序は薄まりながらもまだそこにあ
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