【批評祭参加作品】迷子論序説/岡部淳太郎
ていて、その者の気が緩んだ時に静かに溢れ出す。秩序だと思っていたものが、突如として正反対のものに姿を変えてしまう。それに精神が取りこまれることによって、人は道に迷うのではないだろうか。昔話や伝説に旅人をあざむく妖怪などの異世界の住人が登場するものがあるが、それらの混沌とともにある者は、人が道に迷うことの象徴として使われてきた。そうした物語を語り継いできた人々は、人間が整理してきた秩序も一歩足を踏み外せば混沌の闇の中に落ちこんでしまうことを十二分にわかっていたのだろう。そのような象徴的な物語を継いでゆくことで、秩序の側にあるべき人間存在に一種の警告を与えてきたのではないだろうか。
だが、どんなに
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