【批評祭参加作品】迷子論序説/岡部淳太郎
 
人の精神の健康を計る目安になっている。人は精神や生活に余裕がなくなると、よりいっそう実用的なものに重きを置きたがるものだが、あまりに実用性に傾きすぎることで、自らの余裕のなさの中に他者を巻きこんでしまってそれに気づかないという愚を犯すことがままある。どこかで実用性に傾きすぎることに歯止めをかけなければならないのだが、そのためには実用性の正反対にあるものを持ち出すのが手っ取り早い。実用的でない無駄なものへの親和を示すことは、そのようにして思わぬところで役に立つことがあるのだ。
 さて、ここまで述べてきたような「意志的な迷子」とも呼びうるような指向は、目的に向かって邁進して一所懸命頑張ることを最上の
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