【批評祭参加作品】迷子論序説/岡部淳太郎
上の美徳とする価値観へのカウンターにもなることは見えやすいだろう。また、それがある種の人々から煙たがられると同時に、別の人々からはある憧れを持って見つめられるだろうというのも見えやすい。問題は、そうした既成の価値観(散文的歩行・実用性重視)とその正反対の価値観(韻文的歩行・非実用的なものへの傾き)の二項対立が何をもたらしうるかということだ。目的に向かって一直線に進もうとする「歩行の意志」と、それに対する「意志的な迷子」。それは言ってみれば、社会と社会ならざるものとの、また、生活と生活ならざるものとの対立だが、対立は常に後者の方からしかけられている。何故なら、「歩行の意志」・社会・生活・実用といった
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