【批評祭参加作品】日々のひび割れ −石川敬大『ある晩秋の週末のすごし方が女のおねだりで決まる』評−/大村 浩一
 
葉を買いにゆく

 最終連。ただ「晴れた」ではなくわざわざ「空が晴れわたった」という言い
方に注意。これは空間に意識を置いた、映像的な描写だ。晩秋の深い青空の下
を、たぶん車に乗った男女が、遠くの山を目指してまっすぐ進んでいく。
 この「ジャスコ」が、暗号の多い現代詩にあっては平文っぽい、洒落ッ気の
ない言い方で良い。別にケータイがどうとか書かなくても現代の日常性を描く
ことは出来る。郊外に乱立する巨大ショッピングセンターへの違和感は、同時
にこの詩を現代社会へと接続している。少なくもこの詩はジャスコの宣伝には
使われまい。西武ならまだしも。(笑)
「山へ/どこかの紅葉を買いに
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