【批評祭参加作品】日々のひび割れ −石川敬大『ある晩秋の週末のすごし方が女のおねだりで決まる』評−/大村 浩一
 
いにゆく」結局、地名は最後まで出てこない。最後
は女の台詞の復唱である。そして犬をどうするのかは1字も書かれない。

 この詩はたぶん。当初はウィットを利かせたライト・ヴァース的な仕上げを
狙って書かれたのではと私は思った。けれども書いていくうちに、何か笑い事
で済まされないものを作者は感じたのではないか。それが遂にはタイトルに突
出した、と考えられないか。作者にとって誤算だったかもしれないが、私にと
ってはその誤算のままに描かれたことで、却って印象に残る詩になったように
思う。ただのペーソスギャグだったら読み流していただろう。
 この詩の「女」は、単純な生物学的な意味での女性を
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