【批評祭参加作品】日々のひび割れ −石川敬大『ある晩秋の週末のすごし方が女のおねだりで決まる』評−/大村 浩一
「決まる」と断言で突っぱねる。かなり不機嫌で不遜な感じだ。
ここがこの詩の敷居だ。
「女」という呼び方にもこだわっている。後半に「家事の疲れが」などと出て
くるので、恐らくは「妻」であろうのに、妻でも恋人でも女房でもなく「女」
なのだ。呼び掛けの届く相手が随分と広がってしまう。
ふと先日の芥川賞の「終の住処」を思い出した。主人公が妻や母親、果ては
自分の娘や町行く見知らぬ女まで、実は同じ一人の女では、あるいは裏で示し
合わせているのでは、と妄想を抱く描写がある。この詩もタイトルで「女」と
大雑把に括ることで、主人公に身近な筈の女性を、彼には理解できない種類の
生き物へと変身させ
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