【批評祭参加作品】原罪と救済のパレード(反射熱 第五号)/古月
 
きているようだが、その実「世界の仕組み」に組み込まれて生きているにすぎない。そのことが物悲しく、また愛おしくもある。

>遠い春の日に
>僕らは追い出されたのだ
>そのことの痛みを感じながら
>やわらかく往く人の
>うたを思い出していた

 だが、読み進めるうちに、そうした理解が誤りであることに気づく。楽園追放の物語における禁断の果実は、ここではおそらく「心」なのだ。人間を人間たらしめるものは、アオムシには(おそらく)ない、「しあわせ」を思う心である。
 それが「ごくふつうのこと」を不幸せに変え、人間に、痛みを抱えて生きる宿命を背負わせたのだ。かれらの思い出す「うた」は、おそらく
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