透明で無害な煙草、倍速で行われる会話、無目的的な快速電車/robart
て時間の流れが元に戻った。ドアが開き、乗客は全体の半分ほど降りて、それから僕を含めた何人かが乗り込み、その穴を埋めた。2つ先の駅なので立ったままでいることにした。(快速電車だから、間の一駅はとばしてくれる。)ドアが気の抜けた空気音とピコン、ピコンという電子音を奏でて閉まろうとしたとき、スーツ姿の男性が駆け足でこちらへ向かってきた。無情にもドアは閉じられ、男性は軽く息を切らしながら、肩を上下しながら、プラットフォームに取り残された。がたん、と列車が動きだし、僕は進行方向と逆によろけた。そのとき、乗り損ねた男性とちょうど目が合った。男性は何か言っているようだった。それはあきらかに、僕に向けて言っていた
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