透明で無害な煙草、倍速で行われる会話、無目的的な快速電車/robart
 
はないのだ。僕は本当によく人に話しかけられる。突出している。今時珍しい麦わら帽子の少年、ギャラリーにたまたま居合わせた女性、ぽっこりとでたお腹とちょうど線対称になるようにリュックサックを背負った外国人旅行者、デジカメを持った老人。僕以外にもいたはずなのだ、話かけようと思えば。僕よりも適任はいくらでもいる。僕でなければならない理由なんてない。わざわざ僕は他人の物語の登場人物になどなりたくはない。ひょんなことから旅先で道を教えてもらうこととなった親切な村人A。
 しかしそういいながら、僕は馬鹿丁寧に、ひとつひとつ自分自身でも確かめるように、相手に対応してしまう。声変わりしたての少年から、おぼつかない
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