兄のマル/喫煙変拍子
 

家に帰ると兄が花壇を取り壊していた


“マルを作るんだ”
“マル?”
“庭いっぱいの”


思い立ったがまま行動するのは兄のいつもの癖だ


ほんの1ヶ月前、兄の顔はまさしく今と同じだった
朝、僕が目を覚ますと日光の気配はなく、全ての窓が何かで暗かった
結局、それはだらしなく繋ぎ合わされた巨大な一枚の布で、我が家全体を覆っていた
布には大きく「ネコ」と書かれていた

“ネコに飲み込まれちまったんだ、俺達の家”
“キチガイ”
“悲しいことじゃない、どうせそのうち消えて無くなるんだから”


兄の入れる茶はいつも不味かった
それは葉の所為ではなく兄の所
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