滑った感じ/八男(はちおとこ)
、集中して聞き耳たてるのである。
ニイチャンとネエチャンの世界と自分の執着に翻弄され、ぐらつきつつも、先程の感覚を取り戻そうと、心の中のネエチャンの放尿の残音を消去し、冷静に黄ばんだ白いカバンを凝視し、この黄ばみは決してネエチャンの尿の染みではないと言い聞かせ、うっとりを少しばかり回復させようとするのである。それはあたかも、酒池肉林と俳句が格闘しているようなものだ。
うっとりが回復してくると、ごめんも回復してきて、やりきれない気持ちになった。
ちょっと黄ばんだ白いカバン。自分の所有物に愛着を持ち、常備するって、すごく健康的のように思う。それがちょっと黄ばんだ白いカバンだと余計に
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