凪が終わる時/within
 
感に浸っていた。これだ。僕が求めていたものはこれだ。高揚と歪みの中に自らを同化させていた。
 そのとき、突然音が止んだ。道人が目を開けると、母が立っていた。
「うるさいが、あんた。こっちは夕飯の準備で忙しいんやきん、そんなことやっとる暇があんなら、ちょっとスーパーに行ってきてくれんかの」
 と母は抜けたアンプのコンセントを握って、言った。
「嫌や。邪魔せんといてよ。うるさいなら、ヘッドフォン使うわ」
 と、道人は拗ねたように母の顔から目を逸らした。
「そのギター買うのに母さんと父さんも少し出してやったんやきん、言うこときいて買い物くらい行ってくれてもええんやないか」
 そう言われると
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