凪が終わる時/within
 
アンプに並んであるツマミを適当に回してみた。但しボリュームは最大で。シールドでギターとアンプを直結し、アンプの電源を入れた。まだチューニングはしてなかったが、音を鳴らしてみたかった。
 ピックを右手で抓み、弦を一息で掻き下ろした。震えた。アンプから吐き出される音は道人の鼓膜をちぎれるほどに震わせ、全身の細胞に熱くしみ入るようだった。重なり合う音と音の隙間で余計な感情は押し潰されていった。細胞ひとつひとつがパチンッと音を立てて弾けていく気がした。何かが道人の中で目覚めようとしていた。道人は狂ったように弦をめちゃくちゃに掻き鳴らした。
 大音響に埋まり、目をつむり、今まで味わったことのない陶酔感に
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