凪が終わる時/within
悔しくてたまらなかった。それでも道人は家路を急いだ。あんな奴等のことはどうでもいい。そう必死で打ち消した。今日は特別な日なのだ。
家に着くと、母に尋ねた。
「なあ、きた? 」
母はつっけんどんに
「きとるで。邪魔やきん部屋に運んどいてもろたわ」
と言った。
それを聞いた道人は、二階に駆け上がった。自室に入ると、梱包されたエレキギターとアンプが部屋の真ん中に鎮座していた。道人は興奮を抑えながら、愛おしむように丁寧に梱包を開けた。現れたのは光沢のあるつや光りしたサンバーストの肢体だった。黒いアンプは重厚なスーパーコンピュータのようであり、古代遺跡から発掘された未知の碑文のようだった。アン
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