凪が終わる時/within
 
が」
岡沢の目を見た。笑いの向こう側で、何か暗いものが立ち上っていた。
「そうか、そうか、そうくるんか。ほならお前のこの自転車、貰ていくわ」
「何すんや」
と道人が微かに怯えた声を出すと、岡沢は再び満足そうに笑みを湛え
「今、持ってない言うんやったら、急ぐことはないんやぞ。今日は俺タチ暇やきん、待っとってやるわ。道人君が家に帰ってお金を持って来てくれるまで、ここで待っとってあげるよ。その間、その鞄を預かっとくわ。何、信用してないわけじゃないんやで。道人君もその方が身軽でええが。さっ、この自転車でひとっ走り行ってきな」
と道人を放した。

陰鬱な影を引きずりながら自転車を漕いだ。悔し
[次のページ]
戻る   Point(5)