365分の1としてのクリスマス、あるいは本のカバーについて/robart
 
も100円だった。僕は家に帰ってから、スピヴァクの『サバルタンは語ることができるか』をざっと読みながらDesireを聴いた。気がついたら僕は泣いていた。僕は泣いていた。あれほど退屈だったディランの声が、とても素敵な声に聞こえた。子供っぽい声が僕の耳もとで楽しそうに歌っていた。僕はたまらなくなった。次の日僕はボブ・ディランのアルバムを全部買いそろえた。それから一週間僕は家から一歩も出ずディランを聴き続けた。Time out of mindは特に何度も聴いた。300円程度の安いウイスキーを飲みながら(つまりはブラックニッカなのだが)、僕は静かにディランの声に耳を傾けた。そうしたあと、僕は何とも言えない
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