ガーベラさん/瀬崎 虎彦
来ないという仕事ではない。けれど普段あまり知らない道を、乗りなれない車で行くというのは緊張することだった。
届け先は大学の中にある講堂のような場所だった。花器と生花をセットにして壇上に飾った。髪をひっつめにした若い女性がテキパキと指示を出していて、特に問題も生じなかった。搬入路やスロープもあり、スムーズにセッティングが終わった。器は後日引取りに来ることになっている。搬入が終わると、わたしは空の台車を押しながら並木道を駐車した場所へと向かっていった。
わたしは大学に行かなかったので、年齢はそう変わらないであろう学生たちのはしゃいだ様子や、広々としたキャンパスの案内図を物珍しく見ながら台車を押
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