12月のボーイズラブ特集 副題:知と愛の接触/済谷川蛍
 
しはある意味、至極凡庸で、卑近な人間だといえるかもしれない。ゆえにわたしは彼をわたしから遠ざけたいと思う。無論、わたしは彼のことを愛している。彼を愛するこの世の誰よりも深く愛している。彼自身それを望んだ。しかしわたしは彼に、素晴らしい女性と結婚してほしいと思う。それでこそ美しい物語が完成する。わたしなど登場してはダメなのだ。わたしが想像する彼との接触は、ひどく暗く、淫猥だ。

 三

 わたしは夜ベッドの上で、例の手紙をおそるおそる開く。溢れる愛は直接わたしの胸に流れ込んだ。彼の知性に偏った文章は、彼がわたしに自分の知性をアピールするために意図して書かれたものだろう。その目的はやはり説
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