12月のボーイズラブ特集 副題:知と愛の接触/済谷川蛍
に返事を書くことにした。デパートで便箋と封筒、そして封をするためのハトの形のシールを買った。家に帰ってすぐには書かなかった。なんとなく夜のほうがいい文章が書けそうな気がしたからだ。いざ書き始めると、なかなか筆が進まなかった。それと字の汚さが気になった。文章については、なかなか鮮度の落ちないものに仕上げたつもりだ。何度も読み返して三つに折り封筒に入れた。
翌日、彼の家に直接届けにいった。彼の家は立派なものだった。この団地でも一番だろう。周りの家が小汚い生活感を滲み出しているのに対して、彼の家は本物の家格が漂っていた。彼の部屋らしきカーテンの閉められた窓を眺め、ポストに封筒を投函した。このときに
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