【超短編小説】走る僕の足/なかがわひろか
 
欲を抱えて歩くのはひどく骨が折れた。ここで性欲の柱をなぎ倒す訳にはいかなかった。僕はなんとしても職業女の顔に、僕の精子をかけなければならなかった。やがて僕は適当な店を見つけ、好みの女を選び部屋へと通された。写真とは似ても似つかない女が部屋に入り、僕を浴室へと促した。厚塗りの化粧でニキビ痕を隠した、無目的に太った女だった。彼女の肥満体は何のアンチテーゼを示すものでもなかった。無意味な脂肪が、こってりと女をコーティングしていた。周りの酸素までがその脂肪に吸い込まれているようで、僕は息が苦しくなった。僕は息を絶え絶えに、散々女の風貌を罵った。女は慣れているのか、僕の言うことに耳を傾けず、黙って僕の性器を
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