【超短編小説】走る僕の足/なかがわひろか
僕は馬鹿らしくなって、走るのをやめようと思った。どこに向かっているのかも分からないし、ただ体力が奪われていくだけだった。未知の世界に来てしまっているのなら、体力を消耗するのは避けた方がいい。けれど僕の足は僕の意に反してその走りを止めようとしない。体は消耗する一方なのに、僕の足は僕の意志からは完全に分離していた。
やがて僕の足は明らかに右へと向きを変えて走り続けた。僕の足はこの暗闇の中で一つの信念を持ち、突き進んでいるようだった。僕ははあはあと息を切らせ、耐え切れないほどの喉の渇きを感じながら、足の赴くままに走り続けた。
僕の足はその後も左へ曲がり、右へ曲がりを繰り返し続けた。何度も通っ
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