たくさんの語り手が世界の大切さを教えてくれる詩集 覚和歌子『海のような大人になる』/イダヅカマコト
 
』という詩は、目の見えない少年が語り手になっている詩です。

少年に水の音を聞かせることで、少年に海のイメージを見せてあげた魚屋の大将の心意気を冒頭に置いたこの詩では、少年の意識は非常に強いものがあります。

{引用=みんなの瞳があたりまえに映している
七里ガ浜や真鶴岬を
ぼくの瞳では 楽しむことができません
そのかわり
大将がくれた海は
ぼくにしか見えない海ですが
海という言葉をたよりに
ぼくは そんなふうに
世界とつながっていきたい
どうか それを
ぼくの強さにさせてください
誰かの助けなしに暮らしていくことが
とうてい できない自分を
自分で許してあげること
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