忘れられない言葉/南波 瑠以
 
来るかどうかも分からない千恵さんだからこそ、残せたメッセージであると思う。
 どこにも病気がなく、普通に日常を送っている人にとって、明日が来ることは当たり前である。それは当たり前すぎて忘れてしまうほどに。生きているということだけではない。歩けること、話せること、食事が出来ること…それだけでもう奇跡的なことであり、幸せなことなのだ。



2005年5月24日。



 体操部に所属していた私は、平行棒の2回宙返り下りの練習中に技に失敗し、マットを飛び越え頭部から床に落下した。
頸椎損傷。当時は動けと思って体に力を加えても、ピクリとも動かなかった。人に触られてもその感覚はなく、知
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